エッシャー
瀬崎 虎彦

髪と髪の狭間に青く
釉薬を塗り重ねたような闇
古寂びた寺院の奥に
水を湛えた器

紙と紙の狭間に深く
ひらいた掌のような蓮
連理呼吸さえ白く凍る
夜の淵で濁っては落ちる

夢より覚めてまた
気品ある柱廊に立ち尽くし
入れ子構造の夢を見る

もう一度ともう二度との間に
諦めに似た心境がそろりと
匂いを消した獣の気配で動く


自由詩 エッシャー Copyright 瀬崎 虎彦 2012-10-15 22:22:43
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