アウトラインⅠ
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とけていく和音の

ひびいていく怨嗟の

調律された通路

透明なずれが羽毛のようにあなたの心をとりまく
それは鏡のように豪奢で不穏
痛みはないのに
奇妙な不快感が あなたの身体と馴染まない

無数のシャッター音

耳鳴りのように擦過する

乾いたシャワールーム

砂を踏みしめながら進む

遮光カーテンが肺胞のようにあなたを覆う

風に舞いながら皮膚の内を洗い流し

耳鳴りは已んだ
もう終わりしかないのだろうか
永遠に続く終焉

それだけが、予感
それだけが、予兆

ゼロの音響だけをBGMにするように

それでも

孕まれていく赤

ジオイドを積層させる

不可視の引力

何処までも





淵には空しかない

   
仮想の蒼穹

はてしなく青く澄んで あなたを包囲する



消失した重力のかわりに

市民プールの塩素が鼻梁に絡まったときのような

不快な清涼感が

強く

あなたを空中へと放置する

上昇する感覚さえ、ない

風を孕んだスカートは水母のように波打ち

「赤」を際限なく堕としていく





「なぜ?」がないから

仮想はどこまでも仮想で

記号はどこまでも記号で

それが

「美しさ」をつくるのかも、しれない

シニフィアンに浸潤されたシニフィエだけが

存在するに値する

ただひとつの通路






自由詩 アウトラインⅠ Copyright empty 2012-09-22 07:47:04
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