最後の目撃者
なきり

ああどうして
あなたは、貴方は
赤の他人の私の前で
私が見ていた数秒後で
その黒と黄色の不可侵圏を
飛び越えて、乗り越えて
サーチライトに照らされながら
何を思って、どんな心で
大勢の下敷きになりながら
警笛に追われながら
旅立ってしまわれたんでしょう

何も知らない私だけが
あなたの最後の目撃者だと
残念で仕方がないのです
何か話せばよかったと
後悔をし続けているのです

せめてもの気持ちとして
言葉に表してみたものの
気分が晴れはしないのです
どうかこの気持ちが
貴方に届きますよう
それだけを祈っているのです
どうか、どうか
遠く名も知らぬあなたに
届きますよう、


自由詩 最後の目撃者 Copyright なきり 2012-08-16 21:52:43
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