僕です。
飯沼ふるい

母が
乳房を膨らませる過程で
ほろほろと
無くしたもの

父が
涙を忘れ去る過程で
ほろほろと
無くしたもの

それは僕です。


光と量子とのけし粒が揺らめく
生暖かい感性の海
そこに与えられた
父や母になった人

   (あるような気がする
  (あらゆる磁場と重力の
 (影としての存在

彼ら互いの
哀しみや憐れみ
情けや妥協を
ほぐして漉いて
産声をあげた
また一つの新しい感受性

 (語る僕はいないが
  (語られる僕はいる
   (そのような

母が失ったもの
父の語らなかったこと
それら因果の尖端で
光と量子とが混ざり合う
一秒先の不確かな未来の為に
震えているもの

  (あらゆる磁場と重力の
 (影としての存在

それは僕です。


自由詩 僕です。 Copyright 飯沼ふるい 2012-08-03 12:37:31
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