香水のようなもの
フミタケ

毎日毎日
同じところをぐるぐるまわりつづけて
何を期待しているのか
中学生になったばかりの子供のほうが
自分の現実を直視してるぜ
天体のめぐりのように
あの人生やこの人生が
自分の軌道に忠実にながれ
すれ違ったりぶつかったりを
くり返すことに
あけくれて
誰かの何かのはじまりは
誰かの何かの中途の出来事にすぎず
安っぽい気休めの
嘘で
でっちあげられた世界で生きようと
あがく君の知識の外にいる霊がふいに横切る東京の街は
やむことなく人に
飽きたり感動したりをくりかえし
震えながら低く唸りつづけて
とまらないまま
いつしか
君にとって
音楽は
香水の
ような
もの

なってしまっ

道の端っこと端っこに
老人と幼児
水たまりをはねて
きみの車が通り過ぎる
夜に降り注ぐ
椅子に座ってしか観たことのない場所のニュース
に鈍い感覚
をさましながら
きみは
ただただ言葉とスコッチを吞み込んでいつの間にか
消えた
歩いて
歩いて時には走って歩きつづけてその先に何があるの
うたかたの
夢のように最後には死んで、実像は平等に
忘れ去られるの
ひとつひとつの行動に何かの意味をこじつけてでも見いだして
漂っているのか
すすんでいるのか
考えるのはとっくにやめた
誰かが誰かにひたすらに何かを語り続ける
自分の
物語を
語り続ける
口は動いているけど声は聞こえない
人は自分の聴きたいことだけに耳を傾けるもの
誰の気持ちも
誰にも届いてはいない
賢者が大勢集まっても世界はずっとこの有様さ
可愛いアリサは100円ショップで生活の糧をえる
青春を先週終わらせて
もうずっと
長い間なくしていた
あの気持ち
それは記憶の中だけが置き場所だって
本気じゃないだろう


自由詩 香水のようなもの Copyright フミタケ 2012-06-30 11:56:54
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