倦怠
takano

雨だ

外界へのすべての通路を

遮断する 雨だ

途切れなく水が流れる音

意識の襞にべったりはりついた

彼岸を横切る河の 濁音

音だ

決して 渇きは潤わず

酔いざめのだるい食道を

凪がれていく

雨だ

昨日の殺意が薙がれる

音だ

いくらか 遠くで聞こえる

雨に遮られた男の影

プラットホームのベンチ

の背後で

レジ袋がくしゃる キー音 

縒れた作業着から滲み出て

流れる黒い河

「孤独」という詩行が

捩れた刃物の金型に溶けて

雨となりながれている


自由詩 倦怠 Copyright takano 2012-06-09 07:22:44
notebook Home 戻る  過去 未来