蟻の巣
灰泥軽茶

空に向かって高く

超合金製の蟻の巣が

渦巻き状に伸びている

無機質でのっぺらぼうの蟻の巣も

夜になれば

綺麗に画一化された部屋には

優しい灯りが点り

街を照らす

私はとぼとぼとその蟻の巣を眺めながら

ぐるぐると誰もいない街を歩いると

どこからともなく空白の遠吠えを耳にする

やがて煌々と光る駅に辿り着けば

券売機や時刻表

線路もなくなっていることに

はてどうするかと

ぼんやり遠くでちかちか光る蟻の巣を眺めていると

地面が大きく波打ち

巨大なムカデが勢いよくバウンドしながらやってきて

私は勢いよく呑み込まれ

深い森の中へ連れ去られる



自由詩 蟻の巣 Copyright 灰泥軽茶 2012-05-25 01:28:05
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