会社をたたむ
壮佑


会社をたたむと決心して以来
もののたたみ方に注意するようになった
これまで自分でたたまなかった布団を
たたんでみたりするようになった
いつもはそこら辺に放り投げている
パンツや靴下もたたんでみた
風呂敷もたたんだし
タオルやキャンプ用テントや
驚く女房のパンストまでたたんだ
たたむのは案外簡単だと思った
しかしあまり音がしなかったので
何とも言えず奇妙な感じがした
お前はたたむものの気持は理解しているが
たたまれるものの気持は分かっちゃいないと
私をなじるものがぼつぼつ出て来そうだ
案の定フスマが開いて
ぼつぼつとたたみが出てきた
たたみはたたむものだろうか
それともたたまれるものだろうか
そのどちらでもなく
どちらでないこともない?
考えていたら面倒臭くなってきた
幸い会社はたたまれるものだ
私はドスンバタンと音を立てて
会社をたたんだ
おかげで奇妙な感じはなくなったが
ついうっかりして
会社の気持を分かるのを忘れてしまった
たたみは依然として
ぼつぼつと出続けている
ぼつぼつぼつぼつぼつぼつぼつぼつぼ、、、
もうすぐ私をなじり出しそうな気配
私は先手を打って
家じゅうのたたみを
たたみ屋に張り替えてもらった
会社もたたんで心機一転
新しい方がいいのは
なるほど
女房だけではないようだ
ほくそ笑みながら振り向いたら
頭から角を出して
私をなじるものが立っていた
そいつは散々なじった後
てきぱきと私をたたんで
フスマの部屋へ担いで行って
新しいたたみに加えようとしたが
どうしても余計な一枚なので
たたみ屋と交渉した結果
私はたたみ屋に引き取られて行った
たたみ一枚分を値引させて
万事めでたしめでたしだった






自由詩 会社をたたむ Copyright 壮佑 2012-04-23 21:34:15
notebook Home