しんちゃん自暴自棄?する
アラガイs
「これは自殺予告ではないのか 」
遺産相続人が消えてから二年が過ぎた
人生を生きるにもさまざまなレシピがあって
たとえば、やけに背中の丸い女性が線路を行ったり来たりしてる
ぼくがその知らせを聞いたのは潮が満ちてから、電車が通過して一時間後だったのに
開放された窓の外はいつもの見なれた景色だから、そいつの隣に座るのが嫌で嫌で仕方なくて
憂鬱な気分って目のまえに/がはしる、それでも内心気になりながら眺めてはいたんだけどね 。
「音楽教室の授業が楽しくない理由 」
有線が流れる店の中ですれ違うのは、いつも女の子だった。
妻と家主は会うたびにどこか悩んでいる様子が伺える、夜に
娘の帰りを迎えいれても、互いに面を外し合うことはなかった
教室に入ると先生の毎回違う演奏を聴かされるのは正直苦痛だね
それにしても、レッスンを始めるまえには必ず胃潰瘍の薬を飲んでくるらしい
そんな話しを聞かされる度にさ、この選択はまちがいだったって気づかされてしまう
家主は死んで教室も消えたけど、先生はいまでも元気だ
きれいな死体って、どこか料理を考える方法と似てるよね
「ジャンヌ エビユテルヌのお腹の中は誰も知らない」
石畳に溜まるモンパルナスの雫
1920年この世を去った画家モディリアーニより30年も前に
青い空の下一面に広がる麦畑を眺める、それはこの男にとって残酷なことだったのだ
手にした拳銃はカラスの群れに向けられることもなく自らを撃ち抜いた 。男は享年37歳で売れない絵描きだった 。
人生を捨て去るのにもさまざまな手段はあって、夜半から雪が雨に変われば
思いもよらない死亡通知の連絡があったときの対処方法は、なんて
統計によると生まれてくるよりも亡くなる死者の数の方が圧倒的に多いはず
だって、地球儀に見る世界中の有りとあらゆる場所で殺し殺されながら毎日流しているんだよ、種を含めてね 。
こんな話しをくり返している側からほら、土や水や火の中からも無口ないきものが甦る
雨に濡れれば風邪をひくだけで
「これは、自殺予告ではないのか 」 と ね
。
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ジャンヌ、エビュテルヌ ……モディリアーニの愛人