供物
水瀬游

彼女はこっそりと
自分の部屋のクローゼットの中で
自分だけの神様を祀っていた

一般に、である
神だとか 宗教だとかは
全く馬鹿馬鹿しい物で
馬鹿馬鹿しい物を本気で信じる人間は
奇異の目で見られる
という事を
彼女はよくわかっていた

その辺が私と、新興だかカルトだかとの違いよ、と思っている

自分が神様を信じていることはひた隠しにして
それでも彼女は信じている

教義は一つ
布教を行わないこと

クローゼットの中
大きな祭壇に備えられた供物は、まだ暖かい。


自由詩 供物 Copyright 水瀬游 2012-02-13 02:34:18
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