珈琲店・さぼうるにて
服部 剛
神保町の老舗・さぼうるで
戦後間もない頃から
50年、入口に立つ
80歳のマスターに、僕は尋ねた
「毎日が単調にならない秘訣は?」
「特にないねぇ・・・最近体調悪くてねぇ・・・」
レトロな空間で夢を見たくて
珈琲をもう1杯飲む為に
近所のコンビニのATMに
お札を1枚、下ろしに行った
昼間も寄ったコンビニの、同じトイレで
さっきは急いで切らしたままにしていた
トイレットペーパーを
見知らぬ誰かが付け替えていたので
(ありがとう)と呟いてから、外へ出た
一日の中にみちている無数の(ありがとう)に
気づいた歓びを胸に、神保町の小路を歩く僕は
洋燈のランプの灯るさぼうるの、ドアを開いた
自由詩
珈琲店・さぼうるにて
Copyright
服部 剛
2012-01-23 23:59:11
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