触角
シホ.N


時空が虚構であることを
何故僕たちが知らなければならなかったか
知らぬことが一つの特権でもあったのに

夢の跡をたどり
確かめられるものの
すべてを消し去るために確かめる

片々のひとつひとつを
むしピンで止め
僕たちは飛ばないことを選んだ

眼鏡の強度を
合わせることも
もはや二度とはしないだろう

腹部の筋肉を鍛えたからには
虫のような手足で
這うこともできる

無数の異世界からの
風にかざす
触角

時空が虚構であるままに
僕は異界の無数の僕たちと
泣き笑いの合図を交わす



自由詩 触角 Copyright シホ.N 2012-01-09 23:21:43
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