結納にて
はだいろ

そういえば、
今日は、エルヴィスプレスリーの誕生日である。
そうゆうめでたい日に、
ぼくは、彼女と、
彼女の両親と、
ぼくの両親とで、
結納を行った。

結納なんて、
ぜんぜんわからず、
するつもりもなかったのだけど、
バタバタとすることになり、
バタバタと、
つつがなく行われ、
よかったよかった、めでたしめでたし、
というわけであった。


理想はいつでもあったのだろうけれど、
もうこれがしあわせだと思ってしまえば、
よけいな夢は捨てることが、
しあわせなのだという気もしてくる。
それが、外へ、空へ、
明るい方へ向いていれば。

ぼくには、
子供のころからいつも仲良く一緒に遊んだ、
いとこがいて、
ほんとうの弟みたいに思っていたのだけど、
そのいとこが、一年くらい前に、
結婚していたことを、
母親から、昨日、初めて聞いた。
数年前、おばあちゃんが亡くなったときに、
その遺産のことで、
ぼくが不用意な発言をしたことで、
いとこの家族と、
ぼくの家族との間には決定的な亀裂が入ってしまって、
それ以来、
まったく交わりがなくなった。

だけど、
ぼくは、おばあちゃんの遺産なんて、
当たり前だけど、
ちっとも狙ってなんかいなかった。
ただ、大人たちが、
そんなことでぴりぴりすることが、
可笑しいね、って、
いつも遊んでたいとこにウィンクしたつもりだった。
俺たちには関係ないけどね、って。

ところが、
いとこや、その家族にとっては、
おばあちゃんの遺産は、異常に神経質にならなければ、
ならない何ものかだったらしい。
ぼくは、びっくりした。
こころのそこから、びっくりした。
いとこが、ぼくの発言を、
その言葉じりを、どうゆうふうに伝えたかはわからない。
だけど、
それは、決定的な亀裂だった。
人間って、
わからないものだ。
同じように遊んでいても、
じつは、まったく違う世界の、まったく違う時間の、
まったく違うルールにいたということになる。
悲しいとか、
悔しいとか、
そうゆう感情すらない。
ただ、そうゆう世のことわりを知った、
というだけのことである。


彼女と、
ぼくとが、うまくいくかどうかは、
結局、だれにもわからない。
それはそれでいいと思う。
ぼくが頭をなでると、
まるでそうゆう動物みたいに、
嬉しそうにする。
それだけでいいよ、と思う。


帰ってから、
エルヴィスのレコードを大音量で聴く。
ゴールデンレコードでいうと、第三集くらいの、
マイルドなワイルド感が、
実に素晴らしい。
今日は、いい日だったと、
素直に思う。








自由詩 結納にて Copyright はだいろ 2012-01-08 20:22:14
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