転調した花婿も独裁者と同時に腐る
timoleon



窓を開け放つと風が発泡する
それも少し前の記憶
目が覚めている領域に
睡魔は
棲みつく
眠ればこっちのものだ
ヒトの器を残して

記憶は更新され
忘れがたきモノ

核廃棄物のように行き場もない

 手渡す相手も、
捨てるタイミングも
失くした
部屋の鍵
それが鬱蒼とした記憶の中で
白い小鹿のようにこちらを見ている
震える瞳には黒い虚無を湛えて
喚起を待つ波が暗い海原を蠢いている

「私たちの神様は
 死んでませんから
 十字架は
描かれていません」
と、メキシコの
大柄な女性は
ジーザスと動物たちが
地上で戯れる
色鮮やかな絵画を
指さした

地上ではいつでも
落下するものを
腐敗する支度に入って
いる
それが恩寵で
静謐な博物館の
硝子ケースの中では
防腐剤漬けの
革命家が
人間の形を残して


                                       


自由詩 転調した花婿も独裁者と同時に腐る Copyright timoleon 2011-12-28 10:46:58
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