monologue
雛鳥むく

王国はいつまでもそこにありますように
ありつづけますように

(そこ、
という代名詞の罪ぶかさについて考えていた)
尾を振りながら過ぎ去っていくいくつかの流体
真白の雪原がどこまでも広がっていますこれは
(げんじつですかげんそうですか)







脅威でしたそれは
いちにちになんにん殺せば気がすむのか
語彙を費やして空虚な詩を書くように
かならずしも許されることではないから、
(間引き、間引き、間引き、
漠然とした口腔に呑まれ
形骸するシニフィアンと、)
 「貝塚ですかここは。
許されることではありませんこれは
 「これが祈りであるはずはない。
収縮をくりかえす砂の城
 「間引き、間引き、間引き、
鎖国?
 「いいえ、わたしだけが。
ああ、



妊婦のいない王国に
白い流体が降り注ぐのです
さながら雪のように
(殴打)
(殴打に次ぐ殴打、)
祝福の電報が行き交い
誕生というものは絶えることのない
詩人たちは呪文を唱えながら街を徘徊する
 「太郎の屋根に語彙ふりつむ。
 「太郎を眠らせ。
眠りまでしろく、
しろい語彙だけがたかく、







王国はいつまでもそこにありますように
ありつづけますように
(そこ、 それ、 どれ?
代名詞を扱いかねている子どもたち
この街には母がいないから
なにもかもがまるで意味不明
詩ですか? それは)
まるで詩を書いているみたいでした
なんにんもなんにんも殺したが
代名詞をあやめても罪にはならない
これは祈りですか?
 「赦されるために赦してみたりして。
雪がふっています
 「こごえている。
氷結、
(あるいは恩赦、)
詩人は窓硝子の結露すらも詩だとうたう
おなじころ
寒色をした海辺では
新社会人たちが列をなし
防波堤から海に飛びこんでいた
真新しいスーツはすぐに
仄暗い水の中に消え
世界の片隅ではまたひとつ
甲高い産声があがる


いうような寓話で
殺戮をくりかえす彼ら
(いちにちになんにん殺せば気がすむのか)
まじないはまじないのまま
形骸は形骸であることをやめずに
 
 
 


自由詩 monologue Copyright 雛鳥むく 2011-12-03 04:22:46
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