monologue
雛鳥むく
王国はいつまでもそこにありますように
ありつづけますように
と
(そこ、
という代名詞の罪ぶかさについて考えていた)
尾を振りながら過ぎ去っていくいくつかの流体
真白の雪原がどこまでも広がっていますこれは
(げんじつですかげんそうですか)
*
脅威でしたそれは
いちにちになんにん殺せば気がすむのか
語彙を費やして空虚な詩を書くように
かならずしも許されることではないから、
(間引き、間引き、間引き、
漠然とした口腔に呑まれ
形骸するシニフィアンと、)
「貝塚ですかここは。
許されることではありませんこれは
「これが祈りであるはずはない。
収縮をくりかえす砂の城
「間引き、間引き、間引き、
鎖国?
「いいえ、わたしだけが。
ああ、
妊婦のいない王国に
白い流体が降り注ぐのです
さながら雪のように
(殴打)
(殴打に次ぐ殴打、)
祝福の電報が行き交い
誕生というものは絶えることのない
詩人たちは呪文を唱えながら街を徘徊する
「太郎の屋根に語彙ふりつむ。
「太郎を眠らせ。
眠りまでしろく、
しろい語彙だけがたかく、
*
王国はいつまでもそこにありますように
ありつづけますように
(そこ、 それ、 どれ?
代名詞を扱いかねている子どもたち
この街には母がいないから
なにもかもがまるで意味不明
詩ですか? それは)
まるで詩を書いているみたいでした
なんにんもなんにんも殺したが
代名詞をあやめても罪にはならない
これは祈りですか?
「赦されるために赦してみたりして。
雪がふっています
「こごえている。
氷結、
(あるいは恩赦、)
詩人は窓硝子の結露すらも詩だとうたう
おなじころ
寒色をした海辺では
新社会人たちが列をなし
防波堤から海に飛びこんでいた
真新しいスーツはすぐに
仄暗い水の中に消え
世界の片隅ではまたひとつ
甲高い産声があがる
と
いうような寓話で
殺戮をくりかえす彼ら
(いちにちになんにん殺せば気がすむのか)
まじないはまじないのまま
形骸は形骸であることをやめずに