堤防と
Lily Philia



電信柱の
路地を抜けて
懐かしい唄は右手に

選べないからだのまま
どこまでゆこうか
どこまでゆこうか


手を振っていた
知らない帰りみち

知らないあたしたちは
女の子のように
恥ずかしがったりもした

遠慮もなく泣くから
来たみちで
もてあましていた心細さとかよりも
洪水しそうな思い出を左手に

堤防の向こうへ
堤防の向こうへ


帆をあげて
恋に似た感情がやってくる


ほんの少しだけ
睡っていたいと
俯く
あなたの影

いづくへか
いづくへか
こころは
ぬぐえない
ふくらみまでさしかかり
膝を抱える


知らないヒトの名前を
砂浜いっぱいに書いて
無くして仕舞った
なんだかよくわからないモノを
無くして仕舞ったのだから
なんだったのかよくわからないソレを
気づかないうちに連れて
一番大切な名前を呟く


男の子は
いいなと思った
あの日

あたしは
いってしまった
夏を想っていた


くちぐせは
なんだったのか

波が
寝返りをうつ


水平線に
溶け入りそうな熱を呑んで
キスがしたいと
あなたが
ふくれあがる


堤防を越えたら
今すぐにゆこう
今すぐにゆこう








自由詩 堤防と Copyright Lily Philia 2011-11-02 15:38:46
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