ねぇ、ルカ?
あたしたちは、
いったいどれくらいの時間を
一緒にすごしてきたんだろうね?
ねぇ、ルカ?
どうやったらあたしは、
ルカの声を聴くことができたのかしら?
ねぇ、ル ....
(iti)

かみさまがくれた
あたしがどうか
木のように
たおれないでいられますように
この足に
もしも役割があるなら
もうずっとこうしてる。
てのひらは
ひらかれて ....
指さきでふれて
そっとふれて
気づかないくらい
そっと
そぉっと
虹があらわれる時みたいに

そうして
きらきらでぴかぴかの
さんそであふれた海へ
さんそと星くずと
 ....
八月の森のいちれつは
空や雲や水平線がつらなって
やがて終わりの景色のなか
白い波の輪郭にしずんでいった。
泡と光をとじこめて
ヤギの背中のようにあたたかく
そして
引き返せ ....
みずのいちばん深いところから
ららるら、ららるら
と、音がなっている。
どこがはじまりで
どこがおわりだったのかわからなくなった世界で
祝福は洪水になってあふれていた。
夏のに ....
白い砂浜をあるいていると
神さまがいらしてね
あたしのあたまんなかに
鳥をおいてった。
その鳥がいうには
夜のむこうがわには
せかいのおわりがあってね
あいする
ひとともの ....
(みっつのおはなし)



エニシダは、立派な低木樹です。
あたしの背よりも少しだけ高い
ちょうどいい面もちをしています。
毎年、雲雀たちが
無数にからだを駆け抜ける季節には
 ....
だれかが天上から
そっとオールをさしいれてくる。
凪いだ水面のようにしていた雲はしずかにわれ
そこから幾本にも分かたれた
まばゆいばかりの光の束がおりてくる。
はじまりは右のオー ....
あたしたちを支えあってる重力は
ぶらんこみたいに
そっと息を詰めて
あたしはむせかえるようなひかりに
あたたかな胸を浸して
果てなんてないような
ひどく澄んだひだまりと
おも ....
(まっかだね。
(もえているんだよ。
(うまれたんだね。
(まっかだね。
(ないているんだよ。
(ないているんだね。
(まっかだよ。
(そうさ。うまれたんだよ。

 その ....
白い息を吐き出しながら
朝一番の病院ゆきのバスを待つ。
あたしの声は、
もう随分と白い息に呑まれ始めていて
夢の始まりのようにして
よくきこえない。

 小さく逆さまに立ち上 ....
はしるの
スカートが汚れるのも
構わないで

あちらこちらが
ゆうやけだ
こげたみたいに
あたしたちがきえる

 そうしてあたしたちは
 水平線に並べられた
 かみさまの ....
 あたしは横になって、
 沈んでくるのか
 立ちのぼっているのかわからない
 ゆきひらのようなそれをみている。

 明日のことなんて
 しらないから
 波間に間に消えてゆく
 ....
どこへもゆけない
どこへもゆけなかったんだろう
だれも

いいんだよ
いんだよ
そんなことは

あたしたちに
ゆきどころなんてなかったね

かみさまもしらない

 ....
 

 
 空に無軌道の
 分光が暗闇を
 喰いつぶして前進する
 一塊りになったワルツの中を
 やつらに圧し拉がれて
 ちぢむあたし
 舌を打つ

(二倍率)
からだのあちら ....
うみ
   きらきらしてる

うみ
  きらきらしてる

     ひかり
    ひかりのつぶ
   あわ

  ああ
    ほんとうに
 これっきりなんです
 ....
((あたしたちは
 みんな
 かみさまのこども
 だれひとりとして
 ひつようをなくして
 だれひとりとして
 とどまることをしらない))


ああ、けさも、あたしたちは ....
あなたから
よぉくみえるように
花火うちあげて
あなたから
よぉくみえるように
花火うちあげて


あたしたち きらきら
垂れる
してしまう
景色から零れ続け
抜け ....
春、一斉に花びらひらいて
みんな
死んだ冬のこと
忘れてた

あたしを殊更に
どうかさびしく
絶えずその
可愛いつむじの辺りを
くるくると廻っている
 ....
「いつの日の事だったか
 あたし よくは覚えていないの」

     ((雨・雨・雨の音))

  瞼を潜って沁みてくる光
  カーテンを閉じて
  もう
  睡って仕舞い ....
そのころ
あたしは
すっぱだかになって
ベットにもぐっていた

おなかのビーチ

ちょうしっぱずれの
カセットテープが
へやのすみで
まわっている



 おぉーい ....
ミスター・ホリディ!
左胸に風穴をあけて
そこから空の碧
突き抜けてる!
なんてチャアミング!


海沿いを奔るだけの
汽車に乗り込んで
あの変な容器に入った
お茶を呑もう ....
電信柱の
路地を抜けて
懐かしい唄は右手に

選べないからだのまま
どこまでゆこうか
どこまでゆこうか


手を振っていた
知らない帰りみち

知らないあたしたちは
 ....
耳の奥が痛いのは
雪がみんな
音を喰べて仕舞うからなんだ。
って、雪原の真ん中で
ボンボン帽子の男の子が
教えてくれた。

 (掌があったかいね。)

 (向こ ....
きみは眠りすらうしなって
エイギュイユ・クルーズの亡霊たちのさなか
みみもとできこえる音に名前をつけようとして
自分の大切なものの名前をわすれる




密度の ....
悪くなったアイスコーヒーみたいな街の小さな川で
潰れた空缶が溺死している
ずっと昔のことを思い出す
買ってもらったばかりの
ソフトビニール人形をバラバラにして似たような川に捨て ....
「えいえん 佳子1997 冬」「鳥の唄 2000 冬」全面改定版
ダーザイン


「えいえん 佳子1997 冬」増補改訂版  武田聡人


「もしもし、もしもし、神様ですか?」
 祖父 ....
口の中に微かに鉄の味がある
コートの袖口が擦り切れている
錆びたドラム缶からはいだして
月下の廃工場を後にする
奏者を失って久しい機械が
ほの青く光る一群の風琴になっていた

鳥が飛び立 ....
間遠に灯るガス燈の火を
ひとつひとつ落としながら
どこまでも
迷い道をたどってきました

鳩色の街に
静かに降り積もる粉雪
きしきしと
水晶が発振する音が聞こえます

いつの日にか ....
君は
よわくて
その選択は正しい

うまく隠れすぎて、呻く
君の声が聞こえたときには遅かったのだね、そして
そうさせたのはたぶん私だ

君は
わがままで
その選択は正しい

魔 ....
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