夜のプールに沈む憂鬱は透明な笑顔をぼくらに向ける
空中分解

幾千もの電球がその家の周りを照らしていた

そのどれもが小さく弱い光を放ち

それはとても暖かく

そしてよそよそしく個々を消失させ

一つの個をなす静のようだった

緑の芝生は黄色く染まり

そこに流れた時間の記憶が

漂う様に蔓延している

乾いた枯れ木の根元に置かれた

錆びついたバケツは

打たれた雨の記憶の底にあるようで

もはやそこに在ることすら誰にも気づかれはしない

星の光は電飾と化し

意味も無く瞬き

誰にも看取られる事無く死んでいく

延々と続いたパーティーは終わり

その家に微かに残る発狂の痕跡は

刹那に燃え上がった情熱の赤を思い起こさせるほど十分ではなく

ただ沈とし

誰かの思い出という形ですら存在できなくなっていた

それでもなお小さく弱い群衆は

大きく輝く静として

その周りを照らし続けていた


自由詩 夜のプールに沈む憂鬱は透明な笑顔をぼくらに向ける Copyright 空中分解 2011-10-11 15:12:33
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