ラムネ色の短い時間
花キリン
柑橘類が口の中で甘く香っている。心の片隅では炭酸が甘くはじけ飛んでいる。グラスの中のひと欠片の氷を競い合うようにして、夕暮れが喉もとに下りてくる。縁側の置石に手酌するように水をまく。ラムネ色の短い時間がすぅっと舞い降りてきて、私にいっとき重なる。そこに蚊帳などがあって、グラスの氷の融ける音が枕元に残されている。草原に波立つ風は、手品師のように不思議な変化を好むから、匂いを消して忍び寄ってきては、少しばかりの涼しさを残してさっと引いていく。そこだけに誕生するもの。暑い夏は、眠る夢などは、明け方近くまで待たなければならないのだろう。