ひだまり
千波 一也
袖にはいつも
きまぐれさんが住んでいて
ときどき、すこし、
わたしに優しい
雲のかなたに広がるものや
星の向こうに輝くものを
いつからかわたしは
素直に待てなくなった
そっと
もらして見せる溜め息さえも
どこか計算高い
まがいもの
手まりうた、なんてものを
わたしは全く知らないけれど
ときどき、身軽に、
うたいたくなる
聞いた覚えも
習ったためしも全くないのに
途方もなく懐かしい隙間が
わたしのどこかに埋まってる
ひだまりは
元来優しいわけではない
罪人にとっての脅威は明るみなのだから
ひだまわりは優しくない
せめてもの悪知恵で
せめてもの手つなぎで
弱々しくも罪深い人間たちが
優しいもの、と誤魔化したに過ぎないこと
だから
誰もが無言になりがちで
誰もがどこか遠くを見てる
ひとりぼっちで、ひだまりで
襟元には
いつか忘れてしまった息継ぎが眠っていて
わたしはずっと、ずっと、
それを上手に聞き流す
そうでもしないと
捕まえられてしまうから
むごいようでも、慈悲深い、
真夏の瞳に
黒点に