フェルメールの窓
A.Yusa






初めて眼にした君は、光と影の交差する部屋の真ん中で、その境界線の上に静かに佇んでいた

睨みつけるような強い眼差しで世界を覗き、
自身を視線に込めて問いかけるように、促すように投げかけている
(光と共に在るべきなのか?闇に抱かれて眠りつくべきなのか…そして、答えを求めて、答えをくれる人を求めて…)


時を照らさない光と、あらゆる自身につきまとった重い影に抗うように
自己を主張する君の凜と伸びた背筋と、海を抱いた双眸に僕はフェルメールの世界を泳ぐ僕の幻を観た


フェルメール・ブルーの鮮やかな憂鬱に抱かれる君の幻に手を差し出して

慌てて引っ込める弱気な自分の幻が儚く映り

窓枠の無い硝子の内で、青空を夢見る君の強い意志に

青空の下
果てしない空の広さに戸惑い揺れる僕の溜め息が押し戻される

もう、この空も泳げないんだなんて諦めにも君は答えてもくれず

君はまた物憂げな表情で、僕に問いかける
(あなたは、わたしを、連れて行ってくれるのだろうか?あなたの未来に、わたしの居場所はあるのだろうか?)と


いつか空がフェルメールブルーの扉を開いたならば、
此処を旅立とう


光が射し込む方角から、光と影の境界線目指して。





自由詩 フェルメールの窓 Copyright A.Yusa 2011-06-06 15:02:10
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