デパ地下
和田カマリ

影のない陽光を
乱反射させている
柳のような
黒い葉の茂る
背の高い木が
見えている

窓を開けても
風は感じないが
それら木の葉は
ジリジリと
動いて見える

大きなカラスが
1羽
2羽
次から次に
枝に止まった

ボトボトと
何かが落ち始める
1本
2本
次から次に
人生の不合格を伝える
テレグラムのように

カエル好きな
無慈悲な彼ら
同じ味なので
鳥肉もまた
嬉々として
食すのだろう

巻きつき
噛み付き
毒を飛ばし
絡み合いながら
SEXをする

死んだ剥製の
カラスとまぐわう
不届き者もいる

もう地面は
彼らなりの愛で
一杯に満たされていた

満ちてくる
やつらが満ちてくる

俺は
穴と言う穴から
やつらの侵入を許し
内側から犯される

引きずり出すには
うろこが邪魔で
とても痛いだろうし
面倒もくさいだろう

この部屋以外には
もう逃げる場所はない
ホールクロックに隠れ
修羅場を
やり過ごすのだ

ガラス戸を開け
顔を突っ込むと
振り子に当たった

ボーン
ボーン

ホールクロックの
ムーブメントは静止した

ボーン
いや俺は
ボーン

ホールクロックの
ムーブメントを静止させた

ボーン
ボーン

偶然にも
世界に対して
主体性を発揮した
この俺
王にも等しい

ならば
やつらから逃れ
食料に困らないよう
デパ地下に潜み
3年間
生き続けたい
 
デパ地下は俺の
格別なミレニアム
3年王国となるだろう

影のない俺は
窓から飛び出して
最寄のメトロの駅に
突っ込んでいく

イート・イン
王に栄光あれ
イート・イン
王に栄光あれ







自由詩 デパ地下 Copyright 和田カマリ 2011-05-17 19:12:20
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