白い人
佐々宝砂
1
白い人は浜辺を見つめ
見つめられることで
浜辺は姿を変える
夏から秋へ
飛び交いながら鴎たちは嘆く
生まれそこなった夏を
背後には大きな波
あれは九番目の波
白い人は微笑んでいる
軽やかな音を立てる
白い紙でできた檻が
白い人のまわりを覆っている
2
それでも朝の大地を照らす
赤く陰鬱に老いた太陽が
ふくれあがったその相貌を歪ませて
もういちど輝こうとする
白い人は地下の洞窟で
その輝きに身悶え
振り返る
時間は裏返り空間は逆巻き次元は歪曲し
白い人はいくたびも殺され
背中の火傷みみずばれ掌の赤い傷痕
跡傷の勢去指たれさ断切腕たれぎち
れさ殺もびたくいは人い白
り返裏は間時き巻逆は間空し曲歪は元次
る返り振
え悶身にき輝のそ
で窟洞の下地は人い白
るすとうこ輝どちいうも
てせま歪を貌相のそたっがあれくふ
が陽太たい老に鬱陰く赤
すら照を地大の朝もでれそ
3
白い人は浜辺を見つめ
見つめられることで
浜辺は姿を変える
夏から秋へ
夏は終わった!夏は終わった!と
鴎たちが叫んでは飛び交う
大きな波が退いてゆく
たぶん九番目の波が
紙の檻に囚われたまま
白い人は傷を数える
しかしこれが何度目の
何巡目の秋だったか
白い人は
もう思い出すことができない
自由詩
白い人
Copyright
佐々宝砂
2004-11-06 12:56:39
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