エルサレムの売春婦 / ****'99〜'03
小野 一縷



ジーザス
その掌を十字架に繋ぎ止める
楔の持つ結束力 
ぼくときみ

裏側から向こう側を見つめ返そう
ブラウン管を見つめてる
スクリーンを見つめてる
モニターを見つめてる
ページを見つめてる
こっちを見つめてる
ニヤついた顔
しかめ面
軽い鼻息
泣いている
笑っている
怒っている
幾億のあらゆる表情の正面で

ああ
こんなにも悲劇は誰かを喜ばせ
こんなにも不幸は誰かを満たし
こんなにも苦悩は誰かを楽にする

ハニー  ブラザー
ぼくら
苦しむべきだ
ナルシズムに マゾヒズムに サディズムに
エゴイズムに 偽善に 裏切りに 罪悪に 誓って

SM構造から逃れられた恋物語が
一体 何時の 世の 何処にある?
ぼくらと同じく
マスターベーションで一人前になった
ノーマルなアイツ 侮辱されたと言い出した
三回目で飽きられる
アイツの粗末で退屈な愛撫を見なよ

ハニー  ブラザー
ぼくら
異常であるべきだ
そうでなければ
一般的が成り立たない
常識的が成り立たない
アイツらが狂ってしまう
比較対象が必要なんだ

慈愛 その真価を 堕としめぬよう
ぼくら
悲惨であるべきだ


「もう やめようと思う」
きみの口から こぼれた言葉


幾重にも思惑を沈黙させた
重圧な ぼくの無言
次の一瞬
互いの内に 確かに走った針の鋭利


「そうだね」


ジーザス
背に負った十字架の使命 その重量感は
どれほど 心地良かったのですか?

愛が無い ぼくには 
一般的な 愛すら無い 
常識的な 愛すら無い
何処に 行けばいい?
愛に 必要とされない
ぼくは 何処に 行けばいい?
ゴルゴダを 目指しても
誰一人 ぼくを 磔にするべきと 言わないだろう
愛どころか 悪にすら 必要とされない
何処に  行けば?




シスター 
祈ってください
神と子の 御名において
ぼくの 飢餓と覚醒
揺ぎ無い 肉体と精神 その完全均衡のために


眩暈を揺さぶる 鐘の音 鳴り響く
髑髏の丘の上


シスター
永遠の処女という
あなたの その御名こそ
ぼくは
欲情をもって 崇め 
信心をもって 汚すでしょう






自由詩 エルサレムの売春婦 / ****'99〜'03 Copyright 小野 一縷 2011-03-30 22:18:10
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