芋と言葉 
服部 剛

上野の美術館を出た帰り道 
焼芋屋の車が、目に入った。 

財布の懐が寒いので 
「半切りをひとつ」と言い 
小銭三枚をおじさんに手渡す 

紙袋からほっくり顔を出す 
焼芋をかじりながら 
家路に着く人々に紛れて 
夕暮れの上野公園を歩けば 

焼芋を手渡す時に 
「大きめの入れといたよ」と言った 
おじさんの一言を思い出し 
紙袋から昇る白いゆげが、目に染みた。 

日々の仕事に慣れてしまった僕の言葉は 
焼芋屋のおじさんの言葉のように 
誰かを暖められるだろうか? 

これからは一日一回 
隣の人に渡してみよう 
ゆげの昇った一言を 








自由詩 芋と言葉  Copyright 服部 剛 2011-03-22 23:55:12
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