思慕
水瀬游

夜の帳も落ちた頃
明日の朝も早いと言うのに
目が冴えてしまって仕方がないのは
来るはずの無い貴方を待ちわびて居るからだろう

私の居る場所も知らない貴方が
私の名前すら知らない貴方が
いつかここに来るのだと

私の居場所など知るはずもない
私の名前など知るはずもない

ましてや私がここで待っている事など!

だけど貴方は 私のそれ以外を誰よりもよく知って居る
この 醜いという言葉で形容するのも憚られる
赤黒い心臓の全貌と その粘性の内容物を!

この口から止め処なく流れ出る ヘドロのような言葉を
恍惚の表情で眺める貴方のなんと美しいことか!

だからこそ

私の首を掴む貴方の手が 氷点下のように冷たくても
私は安心して貴方に身を委ねられるのだ

貴方が私を刈り取りに
いつかここに来るのだと

夜の帳も落ちた頃
冴えた脳髄で

夢を見る


自由詩 思慕 Copyright 水瀬游 2011-03-17 05:50:07
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