雪原
三条麗菜

雪原の向こうから
聞こえてくるのが
あなたの声と分かります

あなたと私を隔てる
真っ白な雪原では
私の鼓動で雪のひとひらが
舞い上がります

雪の結晶は
科学的な偶然から生まれた
細いガラスの枝を持ち
光を美しく屈折させます
そしてその繊細な形状は
ほんのわずかな熱で
あっけなく溶けて
壊れてしまうのです

あなたの吐息に
含まれる
わずかな熱であっても

私が舞い上がらせた
それはとても壊れやすく
それはとても美しく
それはとても愛おしい
だけど溶けてしまう
みんな溶けてしまう
でも大丈夫
それはもう
いくらでもいくらでも
あるのだから

私は毎日
雪原を越えて
あなたに近づこうとしています
でも足が踏み出せなくて
雪原の冷たさが
そのまま心に刺さって
痛くて痛くて
あなたに近づけない

こんなにも美しい結晶が
いつだって舞っているのに
その中を進む
私の姿が無いなんて

自分の力では
この雪は溶けないのでしょうか
この空に呼び込んで
雪原を消滅させられる太陽は
どこに息をひそめて
いるのでしょうか


自由詩 雪原 Copyright 三条麗菜 2011-03-06 01:50:43
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