たけのこ
藤鈴呼

部屋の中で
未だ見ぬ 桜の花びらを
眺めてた

外に出て
車窓越しに
春を 見つけた

柔らかく 温かい
そんな筈は 無いのに
想像させる

甘い恋と
寄り添う 二人の
未来を

今日 私が出会った
楽しげな 雪粒たちと
遊ぶ風

思わず 笑みが溢れて
止まらない
春街月

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またね そう言いながら
通り過ぎる 町並み

もう 蛍の光が 見えぬ季節だと
誰もが 知っていて

やるせない表情を 浮かべながら
そっと 微笑う

大好きな香りに 包まれて
ふんわりとした 気分のままで
歩く 冬の道

皇帝の花嫁を 抱きながら
リュックは 背負わずに
左手に かけて 

手袋も 取り出さぬまま
磨り合わせて
寒さを 感じる 午後

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私のコトを 一番良く 知って居るのは
この私

家族でも 木の精でも ないの

それを 一瞬ダケ 忘れてしまって

誰かを解ったフリ してみたり
解りたいと願って 前のめったり
取説を 書き上げたトコロで

全部 無駄なんだ

恋をする 瞬間には 思う

誰よりも 相手を 知りたい
誰よりも 相手に 知られたいから
ついつい 我が出るけれど

たくさん有る人生の
ほんの 一部分

掻い摘んだら 
適宜、の調味料と
同じ位

自分のコトを キライになる夜は
とても 弱くて

自分を宥めるコトも
理解することも
忘れてしまう
忘れたく なってしまう

想いが溢れて 突っ走る朝は
夜中のラブレターを
ひっそりと 読み返す

修正液が 勿体無くって
泣く泣く 封に入れた 言の葉も

今なら 一瞬で

デリート デリート
デートの前に
デリート デリート

デリカシーが 無さ過ぎる

認めた癖に 削除だなんて
失礼じゃないか!

何処まで 残して置こうか
何処まで 伝えようか 悩むのは
楽しく 切なく 哀しい作業

飲み込んだ あいうえおの上に
乗っかった あかさたなと共に
ハミングする エービーシー

本当の気持ちを 隠す棚が
古い本に 埋もれて 居るのです

難しいと頭を捻るコトばかりで
五感の現し方を 忘れてた

笑える日々が 全てじゃなくても
触れられる 指が有って
紡ぎたい 心が有るから
また 一日 生きて 行けます

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深海のソナーに映るのは
煌びやかな 人魚姫

いわしの群れで 見えなかった
まるで スイミー

目を擦ろうにも オレは
漬物石じゃない なんて 言ってる

海からは 出られぬ マーメイド
魚群の中から 見つけ出し

腕を掴んで 飛び回る
気球の方が 心地良い

目を開けてみて 此処は
本当の スカイブルー なんて 笑うんだ

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コピー屋さんに 電話して
不思議なトナーを 調合し
二人のライブを プリントアウト

ライフ・リブ 
生きる糧なら 配合済み

奏でる音を 無理に印刷しちゃったら
用紙は有るのに 目詰まりで
だけどね きっと 大丈夫

ノズルチェックの代わりに
ノーズチェック

今日のご飯は 美味しかったかって
セルフチェック

その後で ゆっくり寝てから
ヘッドクリーニング

インクが足りないと
機械は動いてくれないんだけど

君の大好きな青に
僕の描く 情熱の赤を 注いだら
暁の 朝に 辿り着けるから

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強くする為に
一度 出て来た芽を
刈ってしまう

そんなの勝手ですと
責められないまま

トラクターの騒音に埋もれて
空に向かって 呟くけれど

今度は 飛行機が
雑音となる

目障りなモノばかりが多くて
キレイな花ばかりを
眺めたいのだけれど

瞳に フィルターは 
貼れなくて

カメラみたいに
ファインダーだって
ないもんだから 歯がゆい

一度 刈られた作物は
次は 想像以上に逞しくなって
戻って来るんだそうだ

私達は それを
おかえり〜♪ と 迎える代わりに
咀嚼して 生きている

人は どうだろう
傷つけて ズタズタにしたら
果たして 皆
立ち直れるんだろうか

立ち直る 強さなんて 要らないから
甘えん坊で いさせて下さい だなんて
可憐な少女に 涙 零されたら
逆らえないよね

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字を見ただけで 描いた人物の気分が解る
先生が そう仰った時 ドキリとした

絵も 筆先に 想いを 込めるだろう
弦を 弾く 指先は 未来を描く

放物線の 行方
虹の明るさを 信じて 進むんだ

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取り込んだ布団を
寝室に運ぶと

開けっ広げのカーテンのお陰で
瞳に 飛び込んだ
夕陽色

オレンジ 赤茶系統の 夕日も
好きだけれど
今日は 赤と 青の
コンビネーション

少し 青紫チックな 色合いと
冷たい風が
開けた 窓から
転がり込んで来た

残念ながら 一寸 出遅れたようで
球の瞳 合わせられなかったけれど
残照 霞む雲 淀む稜線に
心 潤みそうになる

手前の校庭で
蹴鞠をしているよ
そんなら こちらは
手前味噌の 皇帝で
そっと 乾杯

皇帝の花嫁
粋な味は
マルメロの香りに 包まれた
鮮やか色の 紅茶なんだ

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自由詩 たけのこ Copyright 藤鈴呼 2011-03-05 22:10:27
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