明日に向かって撃て
天野茂典

 


  うっそうとした森の中では
  樹齢何百年という倒木が横たわっている
  かすかなひかりの帯を浴びて
  そこにはみどりの新芽が生えている
  根をしっかりと下ろして
  樹液を吸っている


  世代交代が始まっているのだ
  新芽はいきいきしている
  苔のついた大木を母にこれからすくすく成長するのだ
  森の中は美味しい空気でみちている
  やがて新芽はあたらしいライフスタイルをもって
  森の樹相をかえてゆくことだろう


  それは歴史的必然である
  われわれは静かにそれを見守り続けることだろう
  森の中には体内時計がしかけられているのだ
  チクタクチクタクなりやまぬことはない
  あなたの耳でその音楽を堪能することができる
  雨に濡れた新芽はあらわれたようだ

  
  一艘の舟が魂となって森を離れるのはそんな時だ



       
               2004・11・03


   


自由詩 明日に向かって撃て Copyright 天野茂典 2004-11-03 05:20:22
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