非常事態
佐藤真夏

箸置きに次元をかえて架ける橋 転がる二本の非常階段




きみの手のあやとりの糸たぐり寄せ真水に飛び込む指を絡めて




爪先もまなこも縦に尖らせて剥がす鍵盤しろいとこから




朝焼けを乱反射する異類の眼 垂れるナミダに絶世をみる




弱まった心拍の音が萌えている種にもどってまるくまるくなる




「針千本呑ませて、くすりみたいにさ」口約束に添え木する指




濁流に沈めど浮かぶ木の実らの保つ黄緑 闇夜に映えて




跨って線路をめくる踏切で粘土細工の肌を脱ぐため


短歌 非常事態 Copyright 佐藤真夏 2011-01-23 00:19:30
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