WE あるいは 接続の魔術
真島正人


先が尖っているので
さらに研ぎ澄ませて
接続しろ
差込口は
広げておけ
僕たちは
友達だ
だから
君の肌が冷たくないように
心まで閉じてしまわぬように
先は
氷に浸して
尖らせておく
もっと
さらに
奥へ
奥の部屋へ
そしてやがては
偏在を詠う

詠うことができる日まで



「私たち」は
ほかの言語で
「WE」と書く
そこにある「WE」は
陽だまりの子猫のように
やわらかくて重い
子猫の肉体の中に
入っている鉛が
廃品回収車と
接続される
陽だまりが瓦解して
「私たち」の
明日が始まる
クリームソーダを
よく飲め
そして分厚い本を
汗を流して読め



「どちらにも、共通する事柄は?」

ありふれた質問状が届く
そのときには神妙な顔で
「解けてひとつになりやすいこと」

答える
手にはもちろん、表面張力と
幾何学の専門書を
持つ
ずっと子供のころ
どこかの公園で
人を待っていることがあった
その人はブランコに乗って
すごいスピードで回転し
そのうちに
家に帰っていった



接続した先が
すべて同じ言葉を唱えるので
友人関係が怖くなり
逃げ出したというなら
それは半分は正しいし
半分は
誤解している
結局のところ研ぎ澄まし方が
足りなかったのだと
思わなければならない
君は
君の先をさらに鋭く尖らせて
もっと奥へと差し込んでみろ
そうすれば
その先が発酵する
発酵とは
とても大切なことだ
僕たちを
助け
僕たちを変化させ
このような僕たちを
作り上げる
発酵がなければ
僕たちは
もっと違った生き物として
生きていただろう



ところで
今日は公園の
ベンチが
とても、暖かい
冬とは思えない
日差し
うとうととしていると
浮浪者まがいの
格好をした
軍隊が
やってきて
楽しそうな顔で
Molly Darlingを
奏でだした
僕が目を凝らしてじっと見ていると
彼らが手に持ったコートが
日差しに焼かれて
アイスクリームみたいに
とろけていった
彼らも
眠かったようで
楽器を
弾きながら
順次、
眠っていった
むしろ
うとうととしていた僕よりも
先に

眠りの中で、すべての別在は接続されてひとつだ



自由詩 WE あるいは 接続の魔術 Copyright 真島正人 2011-01-02 11:01:27
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