滴
木立 悟
筆を取れば
紙は消え
紙を取れば
筆は消える
身体にあいた小さな穴を
言葉は通りすぎてゆく
灯りの消えた店のガラスに
明るい傘がひしめきあい
水たまりから水たまりへと
流れては流れては遠ざかる
いちばん近くを
いちばん近くを
触れることなく
落ちる雨
紙に 筆に
手のひらに
拙い舞手は
消えてゆく
自由詩
滴
Copyright
木立 悟
2003-10-12 14:23:57