おっぺけぺー
鵜飼千代子

額縁だった庭に景色が戻ってくる
寂しい程に整えられた装置は
演歌師が
おっぺけぺーを 
捻る、
舞台であった

もうすぐ演歌師がいつでも住まう
庭になる

説明のいらない
「ああ、いらっしゃいますね」
という、
景色に

まもなく変わる

ナレーターの必要の無い風景
「おわかりになりませんか?」
で、
微笑むことの出来る景色

乗り越えたのだ
塀の中の、
自然に

乱れる

景色へ



肩車から見る、知らない世界に
またひとつ知ることに
驚きと尽きない好奇心を抱え
行くのだ

愛しいものを
鈴虫の雌が排卵の為に雄を喰らうように
取込むのだとしても、
行くのだ

双顔になって、行くのだ

望むのは
お盆の上のしあわせ

塀は結界でもあるけれど、
結界が、何を閉じ込めているのかは
それぞれ

人間界に、魑魅魍魎を差し挟まない為に
結界が作られるというのが普通で
結界の内が楽園とは聞いたことが無い

けれど、

秘密の花園のような
こっそりと

ね、

そんな風に

おっぺけぺーの演歌師が
流しているお庭に
迷い込んでしまうって
楽しくないですか



わたしは、そんなところに住んでいます。

そんなところから
こっそり、通信します。

もう、
散々踏みつけられた
わたしたちへの

メッセージを。





自由詩 おっぺけぺー Copyright 鵜飼千代子 2010-10-25 16:06:29
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