だから私はきみと家族になる日のことをおもうよ
佐藤真夏

もう何年も前のことだけど
妹と自転車二人乗りしてスーパーへ行った帰り道
道の真ん中に袋に入ったままのえのきが落ちていた
そのすぐあとに五個セットのティッシュ箱も落ちていて
誰が落としたんだろうねって笑いながら
拾って持って帰ったこと
なぜだか急に思い出しました
私が、えのき、と言う度に妹が大笑いしていたのを思い出しました

もう何年も前のことだけど
飼っていた犬と家の裏にある田んぼで遊んでいたとき
妹と姉が走り回って、転んで、二人ともわらまみれになって
驚いて泣いた妹がそのあと口の中のわらを吐き捨てながら
「もう一回やろう」と言ったこと
なぜだか急に思い出しました
玄関のドアを開けた母が急いで妹をお風呂に連れて行ったのを思い出しました

もう何年も前のことだけど
閉店後のお店の駐車場で仕事の終わった父に
姉と私が交互にジャイアントスイングをしてもらったこと
なぜだか急に思い出しました
父がへとへとになって「もう終わり」を連発したあと
しぶとく頼む私たちに「あと一回ずつな」と言ったのを思い出しました

もう何年も前のことだけど
家族がみんなで住んでいたこと
なぜだか急に思い出してしまいました


自由詩 だから私はきみと家族になる日のことをおもうよ Copyright 佐藤真夏 2010-10-19 16:20:20
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