泡沫
こしごえ

連れ去られた声共々
水の惑星の底の無い墓標で
ゆらゆらと陽炎に
あいさつをするのが日課になってしまい
本日の公園は万有引力の縁の下
ここぞとばかりに
下弦の月はそり
青く冴えかえる
ふしめがちなおもい出の
こぶしの中には宙がひとしれず
黙礼をする真夜中すぎ
予約席は不在のままにて
直立する回旋塔がわたしたちを
葬送してくれる
岩船に花の咲いて
泡影は写真に焼かれてゆく
誰にも観賞されず
ひとりきりで
わたしたちを遠望している
サイレント航行は
いつまで続くのだろう

青鬼灯を持ったかなしみの
しろいくびすじを青白く照らされ
ほっそりとかしげたまま
庭先にたたずんでいる
下弦にうすい微笑を浮かべ

その場から、はなれたのだ
自分からは逃れられないというのに
さまざまな可能性のある
内にある歪な種子への恐怖のために
連れ去ったのはなにもの

この世でいちばんこわいのはわたし自身か
しゃぼんだまをとばそう
虹色に輝く






自由詩 泡沫 Copyright こしごえ 2010-10-14 06:30:17
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