フォーン
藤鈴呼

出来れば 完成された 写真が 
本当に 綺麗で有ることを 望むけれども

本当は そうじゃ無いんだって 
心が 言ってる

今 写真に 残したい
今の 私が 耀いて 生るから

そう思えた気持ちは 
決して 腹黒くなんて 無いよ

出来れば 完成された 写真を 
手にした時の 笑顔を 想像したいけれども

泣いていたって 構わないじゃないかって 
思ってる

今日が 一番 若いんだ
そんな 当たり前のことを しみじみと 思う 
瞬間が 全て

今 私は 綺麗だって 思えている 気持ちに 
勝るものなんて 
きっと ないから

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何時からだろう
カーテンを 閉じることに
慣れて しまったのは

一階だから とか
一人暮らしだ とか
多分 そんな 理由で
もしくは 付随する
色んな 感情の 問題で。

一つきりの 窓では
相互に 行き来することが
出来ない 空気が
澱んでしまう

玄関も 開けっぱなしで
住人も 空けっぱなしで
性格は 明けっ広げで、

そんな 生活が
当たり前だった「時代」を
何故 「一昔前」と 括って
繕って しまったのだろう

解(ほつ)れたのは
感情ではなく
感動だった

勝手に 磨き上げた
「時間軸」を 彷彿とさせる
風通りの良い 室内で
一人 ハッとする

嗚呼 未だ 大丈夫だ
この気持ちだけは
忘れちゃあ いない

そんなことで 自分を 少し
安心させる
八月の 朝

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真ん中に 佇んでみる
両手を広げて
少し 高い 位置に 掲げて
其処で ストップ モーション

視界は 平行四辺形
ゆら ユララ 歪む 錯覚
アナタ 誰ですか
見知らぬ声が 聞こえそうな 夕刻

ワタクシは 今
U字磁石を 演じて 居るのです
解るでしょう?
私の軸を 中心として
両側は 上り坂なのです

どちらから 撮影しても
サンドイッチ型の 雄姿が
浮かび上がるのです
そんな 城下町に 行きました

高い場所は 肌寒いと 思いがちで
こんな 猛暑には
怖い話なんぞを 求めて
逆上がりをしたくも なりますが
一つだけ 気をつけて 下さいな

練習不足の 逆上がりほど
頭に 血の上るものは 有りません

中途半端な 逆上がりほど
息の 上がるものも 有りません

そして 中途半端なだけに
太陽に 近くなった分だけ
逆に 暑いのだと 言うことを

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政治と宗教と野球の話はするな
それが営業の鉄則だと 叩き込まれた

だから疎くなったんだろうと
言い訳は しないけれども
明るくは無いと 言えよう

宗教と言う言葉を口にすると
サーッと波が引く感触を受ける

皆 信じる者が 違うのだ
でも 其れで 丁度 良いのだ

喩えを恋愛に 持って来て
大好きな あの人を 取られないようにって
そんな 妄想を していた頃

宗教って何なんだろうって
突き詰めて考える手前で
この文字で 立ち止まる
約款に 似ているなと 思った

明記して見ると
あらら 全く 似ていないのだけれど

私の脳内メーカーは
そう 判断したんだ

あなたのことを信じている
そんな 確かな 気持ちがあって
お互いに 約束事が 生じる

だから 
信じていたのに! って
裏切られた気分に 成るんだね

最初っから 独立岬に立つ 孤独人には
関係の 無いこと

そう 拗ねた 時期も 有った

ライブ映像で 熱狂する人々は
ある意味 宗教のようだと 思う

何かしらに 心奪われることを
そう言って 揶揄するつもりは ないけれど

何かに のめりこめるって
素敵なことなんだって 知った

それまで あたし、あたし! だった心が
少しずつ 動いて行く

そんな 瞬間だった

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今 この瞬間に
一生の 宝物になる

そう 思えることは

長い 人生
何度も 訪れるものでは ありません

そう 思います

未だ未だ 短い人生を
歩んでいる途中だと
思い込んでいる 私ですから

この先 素晴らしい瞬間は
幾度も 訪れるのでしょう

そう 信じて 
生きて行きますけれども
それでも

一等星の 耀きは 煌きは 
真っ白な 心は

そんなに 何度も
経験できるものではないのだと 思います

そんな 瞬間に おめでとう

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キラッキラと 耀く季節に
石のことを 考えてみる

大好きな宝石は? の 問いに
迷いもせずに 誕生石を応える人も
多いのでしょう

先日 眺めた 火口は
エメラルドの 温泉みたいだった

暑い夜に 注がれるのは
シトリンの ビール

暗い道を照らす 明かりは
トパーズに 喩えられる

この 二つは
間違えては ならない

あの 二人が
引き寄せられる 道だから

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人間 丸みを 帯びて行く
年齢の セイと 言い訳を

こんなぁ 筈じゃあ 無かったと
ハッとするのは 後の お祭り

嗚呼 何時だって 同じね
戻れぬ レールの 上に立ち

明日を そっと 見詰めてる
昨日を ぼおっと 思い出してる

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フラフープ
楽しく 回したら
首が 回らなくなったと 
あなたは 嘆く

違うでしょう?
なくなるのは
一杯 溜め込んだ
脂肪の 筈なのよ

嗚呼 そんなぁ 筈じゃぁ 無いのにねぇ と
もう一度 呟きながら 丸い枠を 回せば

指で描いた 四角いファインダーには 収まり切れぬ
楽しい 未来が 想像できる その筈で。

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ああ ちょっと 待って下さいと
精一杯 手を伸ばす

指先が 空を 掴みそうになり
そのまま 空回り

ふう と 一息ついてから
見上げた空は

カタッ、コトッ と 鳴って居る
まるで 白い雲を 呼んでいるみたいだ

視界を ブーンと 遮るのは
今日が 寿命の ミンミンゼミ

「人の時間を 勝手に決めないで下さいよ」
嘆く代わりに 木に 吸い付いて居る

フォーン と 大きな音が鳴る
近所の駅で 運転手が 牽制したのだ

黄色いラインから はみ出したい輩が多いので
ハンドルを 握りながら 目を光らせて 居るのです

筋雲が レールと 平行になる瞬間に
真綿のような 雲が ぽかっと 現れて
蝉は クタッと 道路に 落ちた

此処からは 天国行きです
場内アナウンスに 乗って 何処までも 走るのだ

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自由詩 フォーン Copyright 藤鈴呼 2010-08-24 07:22:46
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