ゆらり
灰野

揺らぐ音によって
支えられる日々

わたしは鼓膜に偶然を装って
きみに「好き」と云った

美しくなる途中に
きみは止まったままで
笑った
笑いながら「面倒だ」と云った

そういう態度をわたしはとても気に入って
消えていく途中に覚えているのなら
きっとこの先にも会える気がしたんだ

きみはわたしのすぐに難しく考える癖を笑った
わたしはそれすらも難しく考えてしまった

輪郭はもう忘れた
名前は辛うじて覚えている
「笑っている間は忘れられるの」
そんな事を云ったら
「それくらい知ってるよ」って苦笑していたね

愛しい理由は分からないって思ったけど
きみはもう大人になってゆくの
わたしはいつまで子どものまま?

「こっち向いて、笑わなくても去らないよ」

いつの間にか泣いていたけど
それは見られたくなかったから「頭痛がする」と逃げた

でも本当に頭が痛くなったんだ
強い頭痛が消えないのは
いつまでも虚空の中に取り残されたままだから?

終わりは見えないまま
虚空はゆらりとシャボン玉のように所々に浮かんでいる


自由詩 ゆらり Copyright 灰野 2010-08-20 01:56:58
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