ぼくの役目
吉岡ペペロ

ぼくが死んでから分かったことだが家族はばらばらだった
じぶんの死よりそっちの方が悲しかったぐらいだ
ぼくはママやおにいちゃんやパパといつもいま一緒だ
時空をこえるというのはこういうことを言うんだろう
この感覚は言葉に似ているんだが言葉、
ぼくの言葉はもうそのままでは届くことはない

ぼくはこの家族をくっつけようと企んでいる
それはうまくゆくように思われた
根拠なんてなかったけれど信じている
ぼくはキャンプで溺れている友達を助けるのに失敗した
友達とふたりで死んでしまった
友達のお葬式にもじぶんのお葬式にもそこに来てくれたひとたちにも関係ない景色にもぼくたちは存在した

言葉を書き連ねたページもめくらなければ現れないようにぼくたちの存在は生きているひとたちにページをくってもらわなければ届かない
ページをくってもらうことは偶然の産物でしかない
しかしこの偶然というのはあらゆる偶然の法則のなかに張り巡らされていた

でも餅は餅屋だ
そんな法則のからくりなんかには興味がない
そんなからくりのメカニズムはほかの奴が研究すればいい
ぼくの役目は家族をひっつけることだ
ぼくにはそれが出来ると信じていた
ただ腸まるごといっぽんでるような糞がもう出来ないだけだ
ズッキーニみたいな糞がもう出来ないだけだ






自由詩 ぼくの役目 Copyright 吉岡ペペロ 2010-08-08 21:25:06
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