リトル 月
砂木

ソーラーパワーを貯める小さな容器
一日中 陽射しの下に置くと
透明な中に太陽が集められて
暗がりに光る

夕間暮れの四隅にそれぞれ置くと
太陽の神殿のようで
くたびれた靴下の足跡も
遺跡を旅する 冒険者のようだ
汚れたしみは 拭き取らなければ
でも 今はやめよう
太陽の入った容器をひとつ抱えて

枕元に置いて布団の上から窓をみると月
遠く高く天に丸く光る
小さな太陽の入ったこの容器も
月とおんなじ 
かぐや姫って ソーラーパワーかな
月にいくはずだった光りが うちにきたのかも
とりとめのない光とのおしゃべりが
暗闇の中で気付かぬうちに 眠りを誘う

虫を捕まえて籠に入れたら死んでしまうけど
光りはそうっと外へ逃げて太陽にかえる
いらっしゃい いってらっしゃい
悲しいことは何ひとつおこらない
目が覚めたら朝だから

朝の光に 
いなくなった耀きが連れて行った昨日をぬぐい
リトル 月
からっぽのラッパ
胸に抱えて
太陽の下に
立つ


自由詩 リトル 月 Copyright 砂木 2010-07-29 21:58:08
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