*センパイ
藤鈴呼

半回転のままで 微笑む

大爆笑をしている瞬間に ねぇさんが言った
「はい! ソコノ新人笑ってぇ!」

あの頃は 貴方と こんなに笑い合えるなんて
思っていなかったよね

君も とても 綺麗になった
今では カンノミホにも 似ているような パーマ
あの頃は ショートヘアで すっかり男の子みたいだった

女の子ばかりの寮の げた箱 
VDには チョコレート 

なんか 分かるような気がするよ

こんなに綺麗になった 君なのに
恋人がいないのは どうしてだろう

こんなに綺麗な心を持った 僕なのに
あのヒトに 伝わらないのは 
本当の 心では ないからなのだろうか

僕は 偽っている? 何のために?
僕は 凍り付いている ? 一体 いつまで・・・?

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たった二年間の秘書科時代
大人への階段を昇っていた僕達
階段が見えないのだけれど そう 手さぐりで・・・

あんたも詩人だったなんてね 知らなかったんだよ

入学式の時には まっ茶のショートで ちんちくりんの髪してて
とても 近寄りがたかった

「だけど 同類の気がした。」

あんたのノートを見せてもらった瞬間 涙したよね
「いつまでも 大切だと 思ってる。」

結婚したって お互い辛いことがあったって
自分からは連絡もしない僕だけれど

蒼いハチマキで 気合いを入れて
大好きなパープルに包まれたままで
元気なポーズは うちら二人の印だったよね

君の 一番大好きな ピースサインの隣の笑顔で

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あの娘は 駅前で 着替えをしていた
下着一枚でも 何の気がねもせずに

「随分オープンな 人だな。」
そんな彼女は チャッピーを 首に巻く
今はもう亡き あの人のペットを 胸に抱いている

「黒い洋服は 少しやせて見えるから・・・」

あの頃は 太っていた私
いつも こんな格好をしていたよね

紫のシャドーに 真っ赤な口紅 そして ロングヘア
この時の私を あの人が 見たならば 何て言うだろうか

コスプレも上手く出来なくて 親に内緒で行ったあの土地
「あの人が メンバーの彼女だよ。」 ジロジロ眺める私

すぐ目の前には彼女が居て 爽やかな香水の香がした
「こんな格好の良い女(ヒト)になりたい。」

今頃追いついた この年齢
今 私は 彼女以上に 輝いて居られているの?
彼も 居ないのに? 恋人を 求めているの?
それとも 独りが 気楽なの

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あどけない日の 一つのシーン
いつも あの人の後を 追っかけていた

彼女は 不良と呼ばれていた彼と 付き合っていて

「好きな人」 は いたけれど
「お付き合い」 を するなんて
まだまだ 知らなかった頃の あたし。

「冬になると 耳が 冷たくなるから。」

小学校4年生の時に 中耳炎を併発した私に
「今度 併発したら 二度と海には 入れません。」

Dr. それは結構 良い方法かも知れない
胸の谷間なんて 持ってやしないから
あの人に こんなにガリガリの姿 見せたくはない

どうして みんな 足を隠すの? 体育の時間
私は 胸に空気を入れるので 精一杯だった

中距離では 選手だったのに 
風に揺れるたび このバストは 二度と成長しないんじゃないかって
心配していたよね

ブラジャーだって 無理矢理につけた Aカップ
それでも あの人のこと 好きだって 感じていた

幼い日の あたし

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いつも 同じ顔で絶叫しているのだろう
アイツが来ると知って わざと部屋の中でCDをガンガンかけてみる

「車を降りた瞬間 君の絶叫モロに聞こえたよ。」
アパートの方々 ごめんなさい
だけど 貴方達だって ストレスのたまる瞬間はあるでしょう?
瞬間感じていたって 抱き締められたい夜だって あるでしょう?

私の戸惑いは アイツに抱かれるかどうかということで
「オレは するよ。」 なんて アイツが 言っている

何しに来んのか もう良くわかんない だけど
「女にだって性欲はあるのよ。」だなんて 言ってみたって 
刹那過ぎる台詞 「オレにだって彼女いるし。」

そういう問題じゃないよだなんて言いながら 電話を切れないでいる
貴方が事故ったのは そういう事なんだろう

「だから 任意保険入っておけば 良かったのに。」
なんて からかいながらの深夜の電話

やっぱり逢わない方が正解かもよ?
あの人は 「身近な男(ヤツ)に頼れ」なんて言うけれど

頼って 頼って 愚痴りまくって ここまで辛くなったもの
走って 行って 貴方に逢って ここまで 楽に なったもの

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この頃から 君は 世界をなめくさっていたの?

タバコが大嫌いだった少女
いつの間にか ヘヴィースモーカー

くゆらすタバコ 初めて吸ったのは 近くの川原
猫やなぎの 美しさに 魅かれながら
つるんでいた あの娘

「私も 最初は むせたよ・・・ だけど アンタ、むせないんだねぇ・・・」
不思議そうな台詞 そうだろう
何もかにもを なめくさっていたから

僕の戯言も まだ 誰にも見せたことのなかった頃の物語

僕の中で 半生は クルクルと回りつづけて
殻をまとっていた少女の心は 白いノートの中で うめきつづけていた筈さ

白煙を上げる細い物体の代わりに ポテトをくわえながら
「いつか デッカクなってやる!」なんて 想ったことは あったっけ?

普通よりも 小さく生まれ 普通よりも 大切に育てられた
二ヶ月早い誕生に 「娘さんは 死にます」の宣告

1610gの少女は こんなに大きくなった
ガリガリの少女は また やつれ果てて 「死にたい」などと 呟く

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いつの日だったろう 母の身長を越えたのは
いつも 母は 古文の訳を 手伝ってくれていた

地元の進学校 だけど あの頃は どうだったのだろう
私の入学した学校よりも ワンランク上になっていたあの高校

私は セーラー服が 着たかったから 
そして 家から近かったから?

授業をエスケープすることなんて なかったけれど
チャリンコで たった3分の道のり

お昼休みに家でシャワーも浴びることも 出来たのに
竹刀を振りかざす代わりに キンパツをなびかせて走る

「おい! ヤンキー姉ちゃん!!」 トラックの運ちゃんの声
そんな声にも 笑いながら手を振っていたね

あの頃は 「あそこの娘さんは・・・」 後ろめたい近所の声
「ドライヤーでぇ・・・ POOLで塩素がぁ・・・」 分かり易い回答

一日に三人の先公に呼び出され 「あんたの髪は何なんですか?」
恐い先輩が教室の前に立っていた

「またか・・・」の心配をよそに 

「あんたBOWに出入りしてんでしょ? ドラムやってんの?
 今度の文化祭 ドラム足りないんだよねぇ・・・ いっしょ やんない?」

あの時は 爆笑したよね センパイ♪

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自由詩 *センパイ Copyright 藤鈴呼 2010-07-29 00:41:45
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