曖昧な、
錯春


いつも息継ぎを意識をして
まったく君は注意深いな
それを芸術なぞとほざいてみる
嘯いてみる
息巻いて蟹のように
音を荒げる横顔を流し見、
「ラフロイグ下さい」
なんて、味もわかりゃしないのに
女の癖に飲むなよ蒸留酒を
味も匂いも歴史も知らないくせに、と
わからないから飲んでると答えたところで
それを粋だと思ってると思ってると思ってるんだろう?
蟹のように繰り返すばかりで
まったくお話にならない
まったく



「けなされるのも才能だからさ」
と、言い訳じみた台詞だった
白い背中は温度を持っていることが不思議なぐらい陶器の光で
とりあえず頷いておいた
センチメンタル
浮世離れ
暴力
どんな言葉も
たった一回の一発を終えた後では
気だるくてどうでもよくなった
「誰かが見ててくれるんだよ」
「けなしたくなるぐらい見ててくれてるんだよ」
そうだね
そうすか
とりあえず頷いておいた
慰めも励ましも何が美しいかなんかもどうでも
とりあえず眠りたい
とりあえず



「無くても生きていけるものに取りすがったりしないで、」
の、次に続く言葉を思い出せないので
私はあの子の恋人失格
そもそも資格なんてものあったか
恋なんてものは言葉を持つ生き物に必要だったっけ?
はて、
さだかではない
難しい話は戦後の人達に任せて
自分は読んだこと無いけどね
その爪、塗るのに幾ら掛かるの?
その服、どこの駅ビルで買ったの?
その指、関節は何箇所あるの・
興味があるかないか
さだかではない
話題に事欠かない世の中で恵まれてますね
「まったくだね」
とりあえず笑顔

目覚めると独り
独りじゃないことなんかあったっけ?
何かに傷つけられたり励まされたり裏切られたり、されたっけ?
思い上がりだよ、って
涙は出るけど
悲しいのやら嬉しいのやら

さだかではない


自由詩 曖昧な、 Copyright 錯春 2010-07-25 18:43:47
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