駅・本川町
たりぽん(大理 奔)


電停をおりて橋を渡る
引き潮の時間に
この川を見るのが恐い
川底の石たちが
洗い流されるのを
見るのが恐い

少し濁った
なま暖かいような
満ち潮で
どんよりと凪いでいる
昼下がりに
宮島行きのボートが
駆け足にすすむのを
ながめるのが好きだ

透明な淡水が
川の本性をむき出しにする
洗い流されているのは
焼け焦げた骨のような石たち
恐ろしくもほんとうで
遠い未来を見通すことの透明さより
澱んだ安心に埋もれようとする

引き潮の時間に
私の皮膚は流される
川底の石たちが突きつける
なぜ恐ろしいのか
どうしておそろしいのかと

梅雨入り前の涼しい風が
肌寒いから
私は震えているのだ
ふるえているのだ


自由詩 駅・本川町 Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-05-31 00:08:18
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