家なきひと
恋月 ぴの

ねえねえねえってば

私がパソコンの画面指差してるのに
あの人は我関せずとばかりに出かけてしまった

公園の桜でも眺めに行ったのかな

パソコンの画面に目を戻せば何だか騒がしい
う〜ん、ホームレスねえ
確かに差別用語かも知れないけど
取り立てて作者に悪意あるとは思えない
なんて言ったら良いのやら

自覚するしないは別にして
そもそも人ってホームレスなんだよね
家族の待つあたたかな家庭持っていたとしても
そこが心安まる場所とは言い切れないし
お金持ちだからって必ずしも帰る家があるとは限らない

とりわけ言葉を紡ごうとしてる人は皆ホームレスだと思うよ
それだからこそ言葉なんてものに縋ろうとしてるんだしね

あれ、こんなとこまで桜の花びら舞ってきた

今年の桜、雨にも負けず風にも負けず
そんな感じで咲いていて

ソメイヨシノの美しさって歌舞伎のそれと似ている
どんなに咲き誇ったとしても生殖とは無縁だし
人生散ってしまえば全ては無に帰してしまうのだから
無駄なあがきはよせと諭されてるようで

仲良くするって難しいのかな

汗臭い腕のなか、私の帰る場所なのか確かめたくなって
男物の鼻緒もどかしく桜色した光のなかであの人の姿を探す




自由詩 家なきひと Copyright 恋月 ぴの 2010-04-05 21:33:31縦
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