さくら坂
月乃助


なにかいつも悔しくて
無理に笑うことなど
できなかった

さくらばかり、知らぬ顔で
春ひと色

それでも、
きまって咲く花に
いつも違う春がやってくる
矛盾が好きだった

そのときごとに
もたらされる 

なんども手をかざしては、
舞う桜色の空を見つめた
そばにはいつも
重そうな鞄をもってわらう
セーラー服のきみがいた

僕はポケットに手を突っ込んだまま
少しうつむいて
手を触れることさえできずに
勇気がなくて

きみに
嘘をつくことも知らなかった

待っているものなど
分からずにいたのに
ほんの少しばかり期待しながら
さくらの花びらが落ちるのを
見ていた

なにかに拒まれるように
柔らかな春の陽射しの中で
忘れない さくらの坂を
歩いたことを、 

今いる場所を確かめようと
未来を話した あの頃を
思い出す季節






自由詩 さくら坂 Copyright 月乃助 2010-04-03 13:26:03
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