冬と冬
木立 悟





墨の枝が地にとどく
雪は雪に震えつづく
ひとつ押され
黒く点る


道が夜を決め
灯が季をくくる
心は薄く
水は水に


海のむこうの霧
羊のなかの髪と風
声と煙
青空を分ける


けして光でなく
空を岩を巡るもの
土に触れる指の先から
夜を白く燃やすもの


甲を甲に響かせて
冬と冬は駆けてゆく
草を喰むもの 集う水辺
永くゆるりと 切り取られる土


白が白に押し寄せる
赤が赤に渦を描く
黒は黒にさらに渦巻き
色を色に塗り込める


双つの閉じた眼
ふくよかなつらなり
次の季まで
波打つ眠り


とどろいてゆく
途切れゆく
巨きく弱い指が
つらなりをつまむ


咲いてゆく
ふかみどりを点す
うたをこぼす 遠い
骨の窓


降る夜のはざま
冠の子ら
音だけの雨を
鳴らす手のひら


終わるものたちの長い挨拶
暮れにひらく硬い指
つぼみの巣に吸われ
夜は再びはじまってゆく


荒地を渡り
赤は漲る
双つの足跡 双つの影
空を岩をすぎてゆく


























自由詩 冬と冬 Copyright 木立 悟 2010-04-01 10:21:17
notebook Home 戻る  過去 未来