ぶり大根
ki

ぶり大根を作る
お頭が入ってた、ぶり大根用のパックの中に
気持ち悪いと言ってきれいなビニール袋の中に捨てた
数分して血があふれかえっていた
あの瞳は指で押すとぐにぐにしていて
死んだ魚の目をしているねとはよく言うけど実際の死んだ魚の目は久しぶりに見た。
その瞳をえぐって
自分の瞳にしてみた、のは昨日のこと
私の瞳は食べて煮物にしてしまいました。
そうしたかった
ぐちゃぐちゃにしてつぶしてしまったからわかりゃあしない
これからはこの死んだ魚のぶりの目が私の目だから
これからあなたは死んだような魚の目だねって言われることだろう
だって死んでるんだもん仕方ないじゃない
とか言ってみたって死んでないです、すみませんしっかり生きてる
手と足がしっかり生えてる
どうしようもなく血液がどくんどくん流れてる
あなたに抱きしめられると年甲斐もなくどきどきしてしまう
死んだぶりの身をふたりでふうふうしながら食べて
おいしいね
ぶりの目は死んでるけど
わたしたちは生きてるね
生きてるのたのしいね
ぶりおいしいね
ふうふう
おいしいね
死んだ肉をたべることに抵抗がないな、私たち(笑)
おいしいごはんは
こころのみなもと
こころを輪切りにしたら
きっと血まみれな気がするな
汚いな
赤くてどろどろ
でもあなたのそれを私はすくって涙するんだろう
あったかいあったかいふうふうって
あなたの目が死んでも私知ってる
あなたの目が私を見て嬉しくて仕方なかったことを
だから死んでもあなたの肉は食べれない
あなたは死んでも生きている
わたしたちは一緒に死肉を食べた仲でしょ
ふうふうって
そこには愛があって
それが心で
あなたが死んでもそれは死肉ではないから
髪の毛一本一本も私の顔を今にも包んでくれるくらい
あったかい
ふうふう


自由詩 ぶり大根 Copyright ki 2010-03-26 23:13:58
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