季節
岡部淳太郎

季節の変り目には
雨がよく降る
いまがまさにそうで
冬から春へと
季節がわたろうとしている
そういえばあいつも
こんな時に死んだのだったな
そう思ってまだかたい
桜のつぼみを見上げる
今日も雨
街路樹の植込みの葉の
緑がぬれてなまめかしい
あいつが遺していったものが
まだどれだけあったか
まだどれだけ
自分の中にしまってあったか
そんなことを考えながら
ぬれてつやつや光る
舗道に目を落とす
季節の変り目には
雨がよく降る
いまがまさに
そうなのだろう
地球はこれまで
いったいどれだけの雨に
たえてきたのだろうか



(二〇〇九年三月)


自由詩 季節 Copyright 岡部淳太郎 2010-03-26 21:24:35
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3月26日