祈り
北野つづみ

四ツに割ったリンゴを
庭の木の枝に刺しておく
この冬を越せますように
 ヒヨドリたち
どうか無事に越せますように

海峡を越えていく鳥もあるという
敵に襲われぬよう波のうえ低く
 群れなして
その海を越えていけますように
どうか無事に越えていけますように

悲しいことばかり
辛いことばかり
けれど今朝もぬるい陽が翼を暖める
 ので
   芥子粒のようにきらめく
それはただの石英で
ダイヤモンドではないけれど

日々は
 祈りで始まって祈りで終わる
凍った指に息を吹きかけて
空の部屋を暖めて
オブラートに包んで飲み下す
その冬を越えてゆく



自由詩 祈り Copyright 北野つづみ 2010-03-07 14:05:56
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