魔法の絨毯
楽恵


口笛を吹いて、絨毯を呼ぶ
輝く絹と金糸で幾何学模様に織られた、翡翠色の絨毯
絨毯は主人である僕のもとにすぐさまやってくる

魔法の絨毯に乗り込むと僕は
月夜の花に埋もれて眠る
君の夢の中を
風を操りながら自由自在に飛びまわる
カシオン山に抱かれたダマスカスの都から
メディア人の古代王国まで
翼を持ったあらゆる種類の鳥たちを支配する

空は、青い薔薇のような空だ
雲ひとつない紺碧の空だ

君の夢は、雨も虹も知らない青い空

頭にターバンを巻き、黒いマントを翻して
僕が魔法の絨毯で君の夢の中を飛ぶのを
円環する太陽の炎だけが見つめている

見渡せば遥か彼方の地平まで、
すべてオレンジ色した砂漠
遊牧民が飼う駱駝たちが僕を見上げる
砂漠の空を僕と絨毯はゆく

君が夢から目覚めるまえに
どうしてもたどり着きたい場所がある
乾いた風を追い越していく
眼下の大地が砂漠である理由を、僕は知っている

焼けつくような僕の焦りを察知して
マジックカーペットはどんどんスピードを上げていく

オレンジ色した砂漠に広がる青空を
僕は魔法の絨毯に乗りこみ飛んでゆく
どこまでも、どこまでも
君が月夜の夢から覚めるまで



自由詩 魔法の絨毯 Copyright 楽恵 2010-02-25 22:21:01
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