我が心のケンタッキー
salco

ヨドバシカメラの前で
カーネルおじさんは待っております
圧力釜の中でケンタッキーは
香ばしい青空の脂肪にまみれて
踊っている
ファインダーの中を2時間に1本の
バスがたまたま通る
おじさんの永遠の微笑は
マダム・タッソーには置いてなく
しかしモナ・リザより有名だ
微笑みはビジネスだ
円滑な取引を迫る

巨大なコカ・コーラを担いで
Mr.ピーナッツがエムパイア・ステイト・
ビルヂングを一跨ぎする
ここは紐育
彼は生粋のサディストであって、
キョーフとセンリツの笑顔で
― 一体に独眼の微笑は不気味な代物だ―
我々を圧倒し、恐怖の虜にして
永遠に通り過ぎて行き、永続的に迫り来る
子供達は戸棚に隠れ、大人達は窓外を
彼の無事に過ぎて行くのを
歯を鳴らしながらじっと待っている
しかしMr.ピーナッツはすぐに
いつ何時でもやって来るだろう!
世にも優れた支配者として

ここは新宿、ヒースの荒野
やがて発信機は鳴りをひそめ、
地上は時の彼方から
羽毛の如く舞い降りた
永遠の静寂と抱擁する
全面的にぴったりと
無人の大地はその時青黒い大気に抱かれて
眠る赤児のように、性愛に充足した女のように
ゆっくり微笑む事だろう


自由詩 我が心のケンタッキー Copyright salco 2010-02-25 22:02:04
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